中立の立場で、一棟ずつ。
買う前に

修繕積立金が安い物件を、僕が警戒する理由

物件資料を見ていて、修繕積立金が月3,000円と書いてあったとします。安くて嬉しいでしょうか。僕は逆に、そこで一度手が止まります。

毎月の負担が軽いのは、たしかにありがたい話です。ローンと管理費と修繕積立金を足した金額で買えるかどうかを考えるので、ここが安いと予算が通りやすくなります。

ただ、修繕積立金は払わなくて済むお金ではなく、先送りされているだけのお金です。建物は同じように古くなるので、必要な工事費が減るわけではありません。

安いということは、その差額をいつか別の形で払う可能性がある、ということです。

安いこと自体が問題なのではない

先に書いておくと、修繕積立金が安い物件がすべてダメというわけではありません。

築浅で、まだ大きな工事が来ていない時期であれば、積立額が低いのは普通です。問題は金額そのものではなく、その金額が長期修繕計画と噛み合っているかどうかです。

噛み合っていない状態というのは、たとえばこういうことです。10年後に1億円かかる工事が計画されているのに、そのペースで積み立てても6,000万円にしかならない。この差額4,000万円は、どこかで埋めなければいけません。

安いのではなく、足りていない。
この2つは、資料の上では同じ顔をしています。

足りない分は、3つのどれかで埋まります

埋め方は、だいたいこの3つ
  1. 積立金の値上げ。月1万円が2万円になる、というような話です
  2. 一時金の徴収。工事の前に、1戸あたり数十万円を一括で集めます
  3. 工事の先送り、または内容の削減。お金がないので、やらない

1と2は、買った人が払います。3を選んだ場合はお金は出ていきませんが、建物が傷んでいくので、結局は将来の資産価値で払うことになります。

どれになるかは総会で決まるので、買う前には確定していません。ただ、どれかにはなります。

僕が持っている物件でも、一時金を集めることになった棟があります。事前に長期修繕計画を見ていたので想定内でしたが、何も知らずに買っていたら結構びっくりしたと思います。

段階増額積立方式に、特に気をつけています

積立の集め方には、大きく2つあります。

方式集め方買うときの見え方
均等積立方式最初から最後まで同じ額やや高く見える
段階増額積立方式最初は安く、数年ごとに上げていく安く見える

新築の分譲時は、段階増額方式がよく使われます。売るときに毎月の負担が軽く見えるからです。

問題は、値上げは総会の決議が必要で、必ず通るとは限らないことです。計画では上げるはずだったのに反対が多くて据え置かれ、そのまま何年も経っている棟があります。

資料に書いてある月々の金額は、その物件の「今の」金額です。5年後にいくらになる予定なのかは、長期修繕計画を見ないと分かりません。

築15年前後の中古で、いまだに積立金が安い場合

段階増額の計画があったのに上げられていない可能性があります。この場合、次の大規模修繕の直前に、値上げと一時金がまとめて来ることがあります。

僕が実際に見ている3つ

1. 積立金の残高を、戸数で割る

総額だけ見てもピンと来ないので、1戸あたりに直します。「積立金残高 ÷ 総戸数」です。

これが数万円しかない棟と、100万円を超えている棟では、次の工事に向けた体力が全然違います。同じ築年、同じ規模の棟をいくつか並べて比べると、その物件が厚いのか薄いのかが分かります。

2. 直近の大規模修繕をいつやったか

大規模修繕はだいたい12〜15年周期です。

直前に済ませた棟なら、しばらく大きな出費はありません。逆に、そろそろ来る時期なのに残高が薄い棟は、値上げか一時金が近いと考えたほうがいいです。

買うタイミングとしては、大規模修繕が終わった直後の棟が一番読みやすいです。

3. 滞納の状況

これは意外と見落とされます。積立金の金額が適正でも、集まっていなければ意味がありません。

滞納額が大きい棟は、管理組合が機能していないサインでもあります。工事が必要になったときに、話がまとまらない可能性が高い。

どこで確認するか
  • 重要事項調査報告書。管理会社が発行する書類で、積立金の残高、滞納額、値上げ予定、一時金の予定が書かれています
  • 長期修繕計画書。いつ何をいくらでやる予定かが載っています
  • 総会の議事録。値上げの議案が出て否決されていないか、揉めていないかが分かります

これらは契約前でも、仲介の担当者に頼めば取り寄せてもらえることが多いです。「重要事項調査報告書を見せてください」と言うだけなので、聞いてみる価値はあります。

ここを嫌がる会社は、正直あまり良い印象がありません。買う側が管理の状態を確認するのは当たり前のことなので。

じゃあ高ければいいのか

これも違います。

修繕積立金が高すぎる棟は、売るときに不利になります。買う人はローンと合わせた月々の負担で判断するので、積立金が高いぶん、物件価格を下げないと売れなくなるからです。

戸数が少ない棟や、共用施設が多い棟はどうしても高くなりがちです。それ自体が悪いわけではありませんが、出口を考えるなら意識しておいたほうがいいところです。

結局、安すぎても高すぎても引っかかります。見るべきは金額の高低ではなく、計画と釣り合っているかです。

まとめ

修繕積立金で確認すること
  • 金額の安さではなく、長期修繕計画と釣り合っているかを見る
  • 均等積立か段階増額か。段階増額なら、いくらまで上がる予定か
  • 積立金残高を戸数で割って、1戸あたりの体力を見る
  • 直近の大規模修繕がいつだったか。次はいつか
  • 滞納がどれくらいあるか
  • 重要事項調査報告書と長期修繕計画書は、契約前に見せてもらう

面倒に見えるかもしれませんが、確認すること自体は難しくありません。書類をもらって、数字を2つ3つ見るだけです。

買ったあとに知ると打ち手がないので、先に見ておくと気が楽になります。

こーへいマンションレフリー

17戸買って4戸売って、10年以上持ってきました。不動産屋ではありません。仲介はせず、聞かれたことに正直に答えるだけです。

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